ITを活用した一歩進んだ調剤ミス防止策
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すずらん薬局高田店
調剤ミスに関する報道が相次いでいる。 単純なミスであっても薬によっては大問題へと発展し、 薬局の命取りになりかねない。 IT(情報技術)を使って、薬の取り違えがないかどうかをチェックする。 そんなシステムを開発・導入する 薬局が出てきた。その使い勝手、実力やいかに。
「これは何か策を講じなければ、とんでもないことになる」。株式会社クカメディカル (奈良市)の代表取締役である宗本忠典氏は2年前、同社の経営するすずらん薬局グループで起こった調剤ミスの報告を受け、強い危機感を覚えたという。
開発のきっかけは調剤ミス
それはプレタール50mg錠(一般名:シロスタゾール)のところを誤って100mg錠を渡したというミスだった。投薬から2日後に行った在庫チェック時にミスがあったことに気づき、薬局長は本部スタッフと共に患者宅へと謝罪に向かった。患者は既に100mg錠を服用していた時点では副作用等はみられず、宗本氏らはひとまず胸をなで下ろした。だが、その翌日、患者は一過性の虚血性発作を起こし、病院に入院。患者や家族からは「調剤ミスのせいだ」として、激しく責められた。結局、薬との因果関係がはっきりしなかったこともあり、賠償金を支払うまでには至らなかった。しかし、重なる薬局への罵詈雑言に「職員の士気は下がった」と宗本氏。「ミスを犯した当事者以外の薬剤師も、自分もいつかミスをしてしまうのではないかとの恐怖心にとらわれ、相当ストレスを感じていたようだった」と話す。当時、すずらん薬局グループが 安全性の確保に無頓着であったかといえば、決してそうではない。薬剤の調製と鑑査は必ず別々の薬剤師が担当するなど、むしろ独自のマニュアルに定めた手順は徹底されていた。しかし、人間がやったことを別の人間が確認しても、ミスを見逃してしまう可能性がある。 同じころ、川崎市では、抗アレルギ ー剤であるセルテクト(一般名:オキサトミド) と向精神薬であるセレネース(一般名:ハロペリドール)とを間違えて投薬したことで5人の子供に被害が生じ、勤務する薬剤師が自殺するという事件が起こった。この痛ましい事件に宗本氏は、ヒューマンエラー防止には、もはや目視による確認だけでなく、機械の力を借りたチェックシステムが必要であることを確信したという。そして、2年の歳月をかけ、バーコードを使った薬剤の鑑査システム、「ミスゼロ子」を開発した。
レセコンへの入力情報を利用
ミスゼロ子は、医薬品を取り出す際に、各薬剤が入った調剤棚にある引き出し(薬剤ボックス)に貼られたバーコードを読みとって、処方通りに正しく薬が取り出されたかを確認するシステムだ。図1には、ミスゼロ子を使った具体的な調剤の流れを示した。まず、受け付けた処方せんの内容を事務スタッフがレセコンに入力する。次に処方せんと入力された内容が異なっていないかを薬剤師がチェックし、同時に処方鑑査も行う。レセコンに入力された薬剤名、数量といった処方内容に関する情報は、LAN (構内情報通信網)でつながった、独自のデータベースが組み込まれた専用パソコンへと送られる。すると、この情報は無線LANを通じてハンディ型バーコードリーダーで読み込むことができるようになる。 調製を担当する薬剤師は、必ずこのハンディ型バーコードリーダーを携帯して、薬のピックアップ作業を行う。まずは、バーコードリーダーに処方せん番号を入力し、処方内容に関する情報をブラウザ経由で呼び出す。 次に処方せんを見ながら調製を進めるのだが、その際、バーコードリーダーで薬剤ボックスに貼られたバーコードを読みとってから薬を取り出す。仮に処方内容とは違う薬のバーコー ドを読みとった場合、バーコードリー ダーの液晶画面にはエラーメッセージ が現れる。と同時にこのエラー表示に対する確認ボタンがディスプレイ上に表示されるので、それを押してエラー表示を解除する。一方、正しい薬のバーコードを読みとれば、薬剤名と必要な総数(1日量 ×投与日数)が画面に表示される。ま た、調剤漏れを防ぐため、もし2種類の薬剤の調製が必要で、うち1種類の 鑑査、投薬バーコードの読みとりが終了していれ ば、「1/2」といった具合に、残りの調製数を知らせてくれる。 調製が済んだ後は、別の薬剤師による薬剤鑑査を経て患者に投薬される。
システム導入で取り違えはゼロに
すずらん薬局グループ全8店舗で同システムを導入したところ、調剤ミスはほぼゼロになったという。図2は、1日当たり250~300枚程度の処方せ んを応需しているすずらん薬局高田店の調剤ミス件数をまとめたグラフだ。 同薬局の備蓄医薬品数は約1000品目 で、通常、薬剤師7人、事務4人で業務に当たっている。システムを導入した2001年9月以降、薬剤の取り違えは1件も起きていない。もっとも、導入当初は、現場の薬剤師から「バーコードによる確認をいちいち行っていれば、作業効率が悪くなる」といった否定的な意見も聞かれた。しかし、実際にはミスの件数が減ることで鑑査にかかる時間が短縮化されたことなどから、かえって作業効率はアップした。そのせいもあってか、今では「調剤ミスに対する不安がなくなっただけではなく、薬剤師としての判断が必要とされるカウンターでの投薬業務に十分時間がかけられるようになった」(高田店の木本輝彦氏)と、好評だ。また、同システムでは、バーコード照合を行えば、その都度、どの薬がどれだけ使われたのかといった情報がレセコンに送られ、在庫量から使用量分を差し引いた数字が自動的にカウントされる仕組みになっている。そのため、在庫管理が正確に行えるようになった点も大きなメリットだ。宗本氏によると、将来的には、医薬品のオンライン発注システムへと発展させることも考えているという。
2種類のコード組み合わせ薬を特定
これまでも、散剤については、複数の医療機器メーカーからバーコードを使った鑑査システムが販売されてきた。具体的には、処方せんの指示と違う薬品を秤量しないよう、薬瓶のバーコードをバーコードリーダーで読み込むと、その散剤の薬剤名がプリントアウトされるといった商品だ。だが、錠剤やチューブ入りの軟膏、クリーム剤のピックアップ作業に関する鑑査システムはなかった。そこで、クカメディカルでは独自に開発を進めることにした。だが、問題は薬価基準に収載されたべての医薬品をいかに識別してデータベース化するかだった。一般にバーコードとして使用されているのは、流通用のJANコードだが、同コードの場合、同一銘柄の医薬品であっても、例えば100錠瓶と500錠瓶とでは別コ-ドであり、さらに100錠瓶単体と100錠瓶が複数本梱包されたケースで別のコードが付与されている。そこで、ミスゼロ子の医薬品データベースでは、JANコードに加え、薬価のコードである薬価基準収載医薬品コードも併せて登録し、異なるJANコードであっても、薬価コードが同一であれば、同一薬剤であると認識できるシステムにした。
ほぼすべてのレセコンに接続可能
当初は、グループ内の薬局での調剤ミスを防ぐために開発されたミスゼロ子だが、今年8月をめどに商品として販売されることになった。「効果が高いことから、なるべく多くの薬局で使ってもらいたいと考えるようになった」と宗本氏。気になる値段だが、標準装備(ミスゼロ子ソフト、専用パソコン1台、アクセスポイント1台、ハンディターミナル2台)で、100万円程度を予定しているという。さらに、オプションで散剤の秤量の際に用いる電子天秤と専用のタッチパ ネル端末(価格は未定)が接続できる。この散剤鑑査用のタッチパネル端末には、レセコンに入力された情報通りに電子天秤で正しく秤量されていればOK画面が、そうでなければエラー画面が表示される。また、患者の年齢や 体重に応じて常用量も示され、それを超えた量を秤量した場合には、警告が出される仕組みとなっている。接続するレセコンは、基本的にどのメーカーのものであっても問題はないとのこと。また、ソフトの操作は簡単で、例えば、薬剤ボックスに貼り付けるバーコードの打ち出しについても、レセコンから自薬局で採用されている医薬品リストを呼び出し、それをチェックすれば、プリントアウトされる仕組みとなっている。データベースの更新などのメンテナンスは、年に1~2回のペースを考えているという。
大容量QRコードで情報を管理
バーコードを読み込ませ照合することで薬剤の取り違えを防ぐシステムを導入している薬局がほかにもある。東京大学付属病院前にある水野薬局(東京都文京区)だ。同薬局が慶応大学の工学部と共同して「APO-S(アポス)」と呼ばれる薬歴のコンピューター管理システムを開発したのは1979年と古い。93年にはそれを改良して「Liberty System(リバティシステム)」を作った。同システムは、あらゆる薬局業務を支援するトータル・システムで、保険点数請求業務や薬歴のコンピューター管理に加え、薬剤情報提供文書や薬袋用シール、領収書の打ち出し、および在庫管理などが行える。
このリバティシステムに、99年、新たにバーコード管理による薬剤の取り違え防止システムが付加された。同システムの最大の特徴は通常見かける白と黒の“縦じま”のものとは異なる、「QRコード」と呼ばれる特殊なバーコードが使われている点だ。QRコ ードは2次元バーコードの一種で、通常のバーコードに比べ、格段に大容量の情報を表示できる。英数字やかな、 漢字、記号など、最大7089文字までの記録が可能で、リバティシステムでは、このQRコードに患者の処方内容を記録させている。
自動分包機や電子天秤とも連動
では、ここで水野薬局におけるリバ ティシステムを使った調剤の流れを見てみることにしよう(図3)。まず、処方せんを受け付けたら、薬剤師が処方鑑査を行った上で、処方内容を同システムに入力する。その際、画面上に過去の投薬歴や薬歴などの患者情報を呼び出し、適宜、参照する。入力が済んだ後、全処方内容を記した「チェックリスト」(写真1)をプリントアウトする。その右上にはQRコードがついており、どの薬剤のどの規格が、何日分処方されたかといった情報がすべて盛り込まれている。調製を担当するスタッフは、まずこのチェックリストにあるQRコードを、表示機能付きのハンディ型QRコードリーダーで読み込んだ上で、チェックリストを見ながら調製を進める。 薬を取り出す際には、薬剤ボックスに 貼られたQRコードを読みとり、チェ ックリスト通りであるかどうかを確認する。選択した薬が正しければ、ハンディ 型QRコードリーダーには青いランプ が点滅しピッという音が、間違っている場合は赤いランプとともにピピピー という警告音が鳴り、ミスを知らせてくれる。 さらに、同システムは電子天秤や自動錠剤分包機とも連動しており、散剤の処方あるいは自動分包を行う薬剤の処方があれば、それぞれ、その処方内容に関するQRコードがついた散剤鑑査用・錠剤分包用のチェックリストがプリントアウトされる。そして、そのQRコードをコードリーダーで読み込むと、散剤鑑査については秤量チェックシステムと電子天秤に情報が転送され、分包に関しては、自動分包機につながる専用端末に情報が送られた後に、分包機が自動的に作動して薬の調製が行われる。薬の調製が済んだ後は、薬剤師による薬剤鑑査を経て患者に投薬される。水野薬局においてもこのQR コードを使った薬剤鑑査システムを導入して以降、薬剤の取り違えは起きていない。リバティシステムは既に販売されており、価格は5年間のソフト使用料として1端末当たり300万円だ。処方せんを1日当たり約100枚を応需する薬局で2端末程度が必要という。さらに、サーバーやプリンター、そのほか必要に応じて電子天秤や自動錠剤分包機といったハード類の費用がかかる。現在、全国約40軒の薬局で利用されている。
では、ここで水野薬局におけるリバ ティシステムを使った調剤の流れを見てみることにしよう(図3)。まず、処方せんを受け付けたら、薬剤師が処方鑑査を行った上で、処方内容を同システムに入力する。その際、画面上に過去の投薬歴や薬歴などの患者情報を呼び出し、適宜、参照する。入力が済んだ後、全処方内容を記した「チェックリスト」(写真1)をプリントアウトする。その右上にはQRコードがついており、どの薬剤のどの規格が、何日分処方されたかといった情報がすべて盛り込まれている。調製を担当するスタッフは、まずこのチェックリストにあるQRコードを、表示機能付きのハンディ型QRコードリーダーで読み込んだ上で、チェックリストを見ながら調製を進める。 薬を取り出す際には、薬剤ボックスに 貼られたQRコードを読みとり、チェ ックリスト通りであるかどうかを確認する。選択した薬が正しければ、ハンディ 型QRコードリーダーには青いランプ が点滅しピッという音が、間違ってい 。 る場合は赤いランプとともにピピピー という警告音が鳴り、ミスを知らせてくれる。 さらに、同システムは電子天秤や自動錠剤分包機とも連動しており、散剤の処方あるいは自動分包を行う薬剤の処方があれば、それぞれ、その処方内容に関するQRコードがついた散剤鑑査用・錠剤分包用のチェックリストがプリントアウトされる。そして、そのQRコードをコードリーダーで読み込むと、散剤鑑査については秤量チェックシステムと電子天秤に情報が転送され、分包に関しては、自動分包機につながる専用端末に情報が送られた後に、分包機が自動的に作動して薬の調製が行われる。薬の調製が済んだ後は、薬剤師による薬剤鑑査を経て患者に投薬される。水野薬局においてもこのQR コードを使った薬剤鑑査システムを導入して以降、薬剤の取り違えは起きていない。リバティシステムは既に販売されており、価格は5年間のソフト使用料として1端末当たり300万円だ。処方せんを1日当たり約100枚を応需する薬局で2端末程度が必要という。さらに、サーバーやプリンター、そのほか必要に応じて電子天秤や自動錠剤分包機といったハード類の費用がかかる。現在、全国約40軒の薬局で利用されている。
では、ここで水野薬局におけるリバティシステムを使った調剤の流れを見てみることにしよう(図3)。まず、処方せんを受け付けたら、薬剤師が処方鑑査を行った上で、処方内容を同システムに入力する。その際、画面上に過去の投薬歴や薬歴などの患者情報を呼び出し、適宜、参照する。入力が済んだ後、全処方内容を記した「チェックリスト」(写真1)をプリントアウトする。その右上にはQRコードがついており、どの薬剤のどの規格が、何日分処方されたかといった情報がすべて盛り込まれている。調製を担当するスタッフは、まずこのチェックリストにあるQRコードを、表示機能付きのハンディ型QRコードリーダーで読み込んだ上で、チェックリストを見ながら調製を進める。 薬を取り出す際には、薬剤ボックスに 貼られたQRコードを読みとり、チェ ックリスト通りであるかどうかを確認する。選択した薬が正しければ、ハンディ 型QRコードリーダーには青いランプ が点滅しピッという音が、間違っている場合は赤いランプとともにピピピー という警告音が鳴り、ミスを知らせてくれる。 さらに、同システムは電子天秤や自動錠剤分包機とも連動しており、散剤の処方あるいは自動分包を行う薬剤の処方があれば、それぞれ、その処方内容に関するQRコードがついた散剤鑑査用・錠剤分包用のチェックリストがプリントアウトされる。そして、そのQRコードをコードリーダーで読み込むと、散剤鑑査については秤量チェックシステムと電子天秤に情報が転送され、分包に関しては、自動分包機につながる専用端末に情報が送られた後に、分包機が自動的に作動して薬の調製が行われる。薬の調製が済んだ後は、薬剤師による薬剤鑑査を経て患者に投薬される。水野薬局においてもこのQR コードを使った薬剤鑑査システムを導入して以降、薬剤の取り違えは起きていない。リバティシステムは既に販売されており、価格は5年間のソフト使用料として1端末当たり300万円だ。処方せんを1日当たり約100枚を応需する薬局で2端末程度が必要という。さらに、サーバーやプリンター、そのほか必要に応じて電子天秤や自動錠剤分包機といったハード類の費用がかかる。現在、全国約40軒の薬局で利用されている。同システムは総合的な調剤業務支援システムであるため、QRコードを使ったチェック機能の部分だけ活用したい場合であっても、従来のレセコンソフトは利用できない。つまり、同システムを基幹システムとして入れ替える必要がある。「一見、価格が高く感じられるかもしれないが、患者情報を一元管理できる上、様々な薬局管理業務も行えるので、価格に見合うだけのシステム」。水野薬局シニア薬剤師の安部好弘氏はこう話す。
機械への過信は禁物
ミスゼロ子、リバティシステムともにバーコードを使って調剤ミスを防ぐシステムだが、いくつか違いがある。まず、ミスゼロ子は患者の処方内容に関する情報をオンラインで読み込み、それと各薬剤のJANコードとを照合させる。一方、リバテイシステムは、患者の処方内容をすべて QRコードに置き換え、それと各薬剤のコードとを照合させる形になっている。また、ミスゼロ子が調剤ミス防止に特化したシステムであるのに対し、リバティシステムは総合システムで、それに薬剤取り違え防止機能が付いている。こうした差異が両システムの使い勝手の違いにつながるのだが、そのほか、両者には共通の問題点がある。第一に、薬剤のピックアップ作業前、すなわち、レセコンへの処方内容の入力段階でミスがあれば、ミスゼロ子もリバティシステムもその入力情報に基づいて薬剤の照合作業を行っているため、ミスを見逃して投薬する可能性が出てくる。 この対策として、すずらん薬局グループでは事務職員が入力した後の薬剤師によるチェックに加え、薬剤の調製作業は処方せんに沿って行っている。 この方法なら、「エラー」が出た際に 再確認すれば、レセコンへの入力ミスを発見することができるからだ。一方、水野薬局ではチェックリストを見ながら薬剤を取り出すため、薬剤取り出し時に入力ミスを発見するのは難しい。このため、同薬局では、処方 せん内容の入力を事務職員ではなく、薬剤師が行っている。その理由は「医師の処方せんを読むには、専門的知識が必要。また、類似する薬品名が多い中で、処方通り正しく入力するのは薬剤師の方が適している」(安部氏)との判断からだ。さらに、 これらの入力作業 は、細心の注意を払って行われなければ ならないとの考えから、調剤室とは別の専用スペースで行われている。また、投薬時には必ずカウン ターにあるパソコンのディスプレイに患者の投薬歴や電子薬歴簿を表示させ た上で、服薬指導や情報提供を行っている
機械的に数量チェックができないのもミスゼロ子、リバティシステムに共通する問題点だ。実はリバティシステムには数量の間違えを防止するための機能がないわけではない。調製担当のスタッフが実際にピックアップした薬剤の数量をハンディ型QRコードリーダーに入力し、それをコードリーダー内の情報と照合させるといった仕組みがある。だが、現状では、その機能は使われていない。その理由について安部氏は「数量間違えよりも薬剤取り違えの方が生命に影響を及ぼす可能性が高い。そのため、作業効率も考え、今は数量の入力作業は行っていない」と言う。一方、すずらん薬局グループでは、バーコードリーダー画面に必要な総数が表示されるよう工夫したほか、「錠数を数えやすいように、ウィークリーシートを止めて、10錠シートを使うようにした」(宗本氏) といった工夫はしているが、最終的には目視に頼っている。
人間と機械でダブルチェックを
さらに言えば、正しくレセコン入力が行われ、バーコード照合までこぎつけても、例えば、照合後についうっかり隣のボックスから薬を取り出してしまえば元も子もない。また、バーコー ドの読みとりそのものを忘れれば、チェック機能は働かない。前者のミスに関して、すずらん薬局グループでは、各薬剤が入っている薬剤ボックスの側面にバーコードを貼るよう工夫している。こうすれば、ボックスを引き出さない限りバーコードは読みとれない。そして、バーコードでの照合が済んだ後に、その引き出したボックスから薬剤を取り出せば、ミスはより起こりにくくなる。水野薬局にせよ、すずらん薬局グル ープにせよ、必ず最終的には人間の目で確認することを大前提にしている。「人間によるチェックと機械によるチェックとをうまく組み合わせていくことが大切」と安部氏。結局、ヒューマンエラー防止の秘策は、その一点に尽きるようだ。
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